2013年7月21日日曜日

永遠の課題


このところ、こちらの新聞やテレビで大きな話題になっている、ボートピープルの問題。
もう10年以上も前から海を渡って、オーストラリアを目指してやってきている。
多くはアフガニスタン、イラク、最近はスリランカなどからの人たちも増えている。
大体は陸路で東南アジアまで来てインドネシアのブローカーに大金を払い、船を調達してやってくるらしい。ほとんどが豊かな生活をオーストラリアに求めている経済難民だそうだ。
インドネシアジャワ島の南にあるクリスマス島はオーストラリア領なので、その近海を移民局の船が巡視しており、難民船をみつけるとクリスマス島などに収容してきた。

ところがこのところ、ボートピープルの増加が著しく、特に今年はこの上半期ですでに昨年のボートピープル総数に近くなっている。このままだと今年だけで3万人以上が来てしまう。
ギラードからラッド政権に移った今、強硬策がうち立てられ、昨日ついに今後、ボートピープルはたとえ政治難民でもオーストラリアでは受け入れない、という政策を発表した。
今日の新聞に1面で大きく広告が載っている(どうもオーストラリア国内にいる密航ブローカー向けという噂もある)。これを関係国にも印刷して配布するのだろうか?

今後ボートで来た人がいたら、何とパプアニューギニア(PNG)に収容、移住させるそうだ。不思議な方針だが、昨日、PNGの首相トラッド首相が合意を取り交わしていた。オーストラリア政府はその見返りとして、PNGに教育や保健、立法治安などの分野で追加援助をするらしい。
なんで、他の国に送るのか・・・ 当然、今日は市民団体のデモもあちこちであったようだし、アムネスティや国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)もこの政策を批判している。

私は昔、香港にいるベトナム人ボートピープルのキャンプで働いていたことがある。そのベトナム人のほとんど(9割)は政治難民というより経済難民だった。とにかくボートというのは大量に乗せて脱出できるので、どんどんやってくる。制限がなくなり、香港政庁もUNHCRも頭を抱えていた。小さな漁船で命からがらで航海するのは危険も伴うのでいつかは止めないといけないというのは皆の共通認識だった。
なので、オーストラリア政府の考えもわからないでもない。でもなんでPNGなんだろうか?PNGは最貧国ではないが、まだまだ貧しい人々が多くいる。そんな国に難民を迂回定住させることが倫理的に許されるのだそうか?

オーストラリアは国土は大きいが、人口は2千万人ちょっとしかいない。2千万と言うとマダガスカルやスリランカと同じくらいで、国力という意味ではそれほど大きいとは言えない。それくらいの人口では税収も限られる。ボートピープル保護や難民受け入れの予算も膨大になり、そうでなくても財政赤字の中、国家財政を圧迫しているのも確か。この関連経費だけでも年間1000億円近くかかっているらしい。

ボートピープルは永遠の課題で香港でいやというほど考えさせられた。今、またオーストラリアであの時のベトナムボートピープルの人々のことを思い出している。