2012年10月23日火曜日

やっぱりあるんだ・・・


英国料理というと、まずいというイメージが定着している。
かいつまんで言うなら、煮過ぎ、ゆで過ぎ、食物の原型をとどめないものが多く、食材の持つ風味がなく、加えて味つけがない。みな、食卓で塩コショウをかけて自分で味付けをする。やたらと量だけは多く、皿の淵まで料理が盛られている。

アジアでは一般的に宮廷料理がある国は食べ物は必ずおいしいと言われている。その証拠にフィリピンなどは宮廷料理が発達しなかったせいか郷土料理もいまいちおいしくない。
だけど英国には宮廷があるのに、どうしておいしくないと言われるの?悲しいことにお隣のフランスとはあまりにも違い過ぎる。

ということで、世界で英国料理を堪能されることなんてありえないから料理本なども当然ないと思っていたら、なんと「伝統的英国料理」という本をメルボルンの本屋でみつけた。やっぱりあったんだ・・・! 生まれてこのかた、英国料理の本なんて見たことがなかったので、思わず悪い冗談かと思いつつ中身を見て、とりあえず記念に買ってしまった。


やっぱり有名なのはローストビーフ。でも日本人が好きな「ちょっとレア」な赤みを帯びた薄いスライス・ビーフでなく、完全に「ウェルダン」で、少しパサついて、肉も厚い。グレービーをたっぷりかけて、添えはくったりと煮込んだ青物と人参、そしてジャガイモが定番。これはサンデー・ローストと言われ、パブで食べる日曜のランチ。英国人の大好物。


キドニーパイ。これも有名。牛の腎臓をパイで包む・・・というと、少し食欲なくなるかな。
本当にパイの好きな国民だね。



これはカリフラワー・チーズソース。 Mon mari の大好物で、彼が作ったのを何度食べさせられたことか・・・ カリフラワーをベシャメルソースであえて、その上にチーズをたっぷりのっけてオーブンで焼いたもの。まずくはないけど、何となくキャラがないのよね(味の記憶が残らない)。英国人が作るとカリフラワーはくたくたになり、口に入れるとすぐ分解して溶けはじめる(笑)。



そして極めつけは「毛布をまいたマス」。
こんなの見たことも聞いたこともない。マスにベーコンを巻いて焼いたもの。
カリフラワーチーズソースよりは芸があって、なにせ「食物の原型」を保っているのはめずらしい。

とにかく、この料理本は私というより、Mon mari が故郷を思って作る際に参考にするために謹呈した。想像した通り、彼はノスタルジアよろしく、目を輝かせてページをめくっていた。

私がこの本を使うことは多分ないだろう・・・(やっぱり私って偏見あるのかなぁ)。

2012年10月18日木曜日

家にいなくなると・・・


8月末から10月初めにかけて東京に戻っていた。
その間、メルボルンと田舎の家はMon mariがマネージをしていた。
大工仕事や自分の趣味に関することはシコシコするので、戻ってくると壊れたものが直ってたり、動かなかったエンジンが再起動するという現象はあるのだが、なにせ、家の中は一言で表すなら、「地獄絵図」状態となる。

ダイニングテーブル、キッチンカウンター、ソファ、コーヒーテーブルなどは隙間も見えないほど、物や紙で覆い尽くされている。キッチンカウンターはバイク部品や工具などのオンパレードで、ほとんど作業場に変身していた。
床のチリ、ホコリはもとより、キッチンシンク、バルスームなどの水回りもかなりのマグニチュード。
もうどこから手をつけていいのかわからない。とりあえず掃除は1-2日して落ち着いたころゆっくり始めようと思い、今日の献立を考えるために冷蔵庫を開ける。何やら変なにおいがするのでよく見ると、腐った野菜や加工品などがゾロゾロ出てきた。唯一、腐りはしないがほとんど化石ステージに突入し始めたニンジン君が長いヒゲを伸ばしてひっそり野菜室に寝かされていた。あー、これは2か月前にうちに来たニンジンだね、よく頑張って待っていてくれた、とつぶやきながらピーラーでむいて、グラッセにしてあげることにした。

1か月以上家にいないでOzに戻る時は大きな覚悟が必要である。

2012年10月10日水曜日

社会的企業


メルボルンの家の近所に最近発見したユニークなカフェ「Streat(ストリート)」。
もう1年以上この近辺を練り歩いていたにも拘わらず地味な入口のせいか全くここの存在を知らなかった。たまたまうちに出入りしていた業者のおじさんからこのカフェの存在を聞いたのでMon mariと行ってみた。

簡単に言うとこのカフェはホームレスを支援している。支援と言ってもお金や物を寄付するのでなく、ホームレスの人たちを雇用して、そこで職業内訓練(On the job training) をする、いわゆる社会的企業(Social Enterprise) と称される事業である。
現在、メルボルン市内に3店舗ある。各店舗には資格のあるシェフが常勤し、雇用したホームレスに対して、調理からサービス、経営の面まで指導している。
ホームレスと一口で言ってもいろいろな人がいるが、基本的には若い人たちを優先するようである。彼らに技術を身につけさせて自立を促進することで自信を持ち、ホームレスの環境から抜け出せるように支援するのである。

で、そのカフェだが、ホームレスによる食事?なんて聞くとたいしたことないように思えるかもしれないが、これが意外、そんじょそこらのカフェよりずっと内装もおしゃれで、メニューも創作料理顔負けの食事が並んでいる。コーヒーも独自で焙煎し、日替わりで世界中の豆が提供されている。


私が注文したのは、味噌味豆腐乗せのサラダ。みかけより珍味で美味だった。お値段も15ドル前後でしっかりと利益が出るような価格設定である。



ここで働いている人たちは4-5人くらいで、最初に行った時は全員若い男性だったが、二度目は女性も交じっていた。腕に派手なタトゥもある人やパンク調カラーのヘアダイをしている人もいて、普通のお店なら絶対に雇用されない人たちだろう。 ただしホームレスと言っても路上生活者ではないようで、多分、シェルターなどに居住しているのだろうか、きちんと清潔的なみなりをしている。


受け入れる社会や人々がなければホームレスから抜け出ることは容易ではない。特に未来のある若い人たちを支援して貧困の悪循環を断ち切ることは大切である。
こういう活動が日本や世界のあちこちにできるといいのに・・・

Streatの情報はここから見られます。もしメルボルンに来ることがあったら、ぜひ立ち寄ってください。