2011年9月23日金曜日

旗とアイデンティティ

メルボルン郊外にあるスインバン大学で、日本とオーストラリアの援助に関するワークショップがあり、日本のNGO代表として招かれた。オーガナイズした大学の先生によると、在豪のスポンサー財団との関係でキャンパスのど真ん中に日本の旗を立てることになったそうだ。

オープニング・スピーチに領事館の主席領事がいらして話すとはいえ、ここまでやるか・・・と思ってしまった。日の丸の左横にはオーストラリアの旗が、そして右にある黒、赤、黄色のはアボリジニーの旗である。

私は先生に「複雑な思いだわ、海外では日本の旗で顔の見える援助を示すのが日本政府の方針なんだけど、私はそういうのに抵抗があるの・・・」と冗談ながら言ったら、 「おもしろい指摘ね。あなたの気持ちはよくわかるけど、色々プロトコールというのがあってね・・・」と語っていた。

旗の意味って何なのだろう・・・ 
正直なところ、私は旗だけを見て愛国心はあまり涌かない。
日本人が内外で活躍している姿を見たり、日本製品のすばらしさを体感すると、愛国心というか、日本人としての誇りの気持ちが高まる。
 
たった今、ワールド・カップ・ラグビーを見ている。米国対オーストラリア。国旗掲揚して国家を歌うとき、米国人は全員胸に手をあてて高らかに歌っているが、オージーは肩を組み合って、高らかに歌う者、もごもごして歌っている者、そしてうなずきながらほとんど歌っていない者がいる。愛国心の表し方は国や人々によって違うのがよくわかる。

オーストラリアのアボリジニー。今はアボリジニーと呼んではいけないそうだ。「オーストラリア先住民」というのが正式な呼び名だそうだ。
彼らは今でも自分たちの国旗と議会を主張している。
首都のキャンベラに行くと、国会議事堂のまん前に、わらと木で作られた小さな建物がある(上の写真の真ん中)。これはオーストラリア先住民たちの議会で、彼らは今でも自治を主張している。奪われた大地と権利を奪回したいと考えているそうだ。オーストラリア政府はこの建物を撤去することなく、長い間にわたり黙認している。

この5-6年くらい前からの傾向だが、オーストラリアの主要人物のスピーチには必ず、「この大地を与えて下さった先住民たちに感謝をします」という枕詞が必ずつけられるようになった。21世紀になってやっと先住民の存在が少しずつ認められているようだ。長らく追いやられてきた人たちは旗にこだわり、政治的な権利を求め、自分たちのアイデンティティをあらためて訴え始めている。
それは私たちがスポーツの中で旗や国歌から感じる愛国心とは全く違うものなのだと思う。