2012年8月4日土曜日

型破りの学会


今日、メルボルンで「心理社会的産婦人科学会(ASPOG)」たるものに出席した。
主に昨今の女性の健康に関するイシューが議論された。産科では妊婦の肥満が深刻な問題になっており、日本の痩せ妊婦とは対照的な現象がオーストラリアにはあるそうだ。

今回の学会の目玉は最終日の午後に行われた「性器の美容形成の是非について」のセッションだった。
若い女性だけでなく、中年以降の女性も自分の性器の形や色を気にして、美容形成やホワイトニングをする人が増えているという。この現象をどう捉えるかの白熱した議論が展開された。
大多数の人がやっているというわけではないが、この悩みをGP(一般医)にも打ち明ける女性が出始めているそうだ。

議論は、男女の役者の寸劇から始まり、檀上のパネラーのディスカッションに移る。ここで驚いたのは、パネラーはGPや産婦人科医、リプロダクティブ・ヘルスの大学の研究者の他に、メルボルンのBrothel (娼館)で働くセックスワーカーの女性(テーブル左端)も参加したことである。セックスワーカーと言っても派手な雰囲気はまったくなく、ごく普通の町に歩いている女子大生のような人で、最初は目を疑った。日本などでは、学会に例えば風俗の女性が来て性感染症の予防の話や意見を語るなんていうのは絶対に死んでもあり得ないこと。このオープンさは一体、どこから来ているのだろう?

まず議論はなぜ人は隠れた部分に極度にこだわるのか?という疑問から出発した。会場からは、いわゆる「ブラジリアン・ワックス(局部を剃毛すること)」についてジョークを混じりながら口火が切られた。ある人は「要はアソコをフロスしたいのよね(デンタルフロスのように隙間掃除すること)」と言い、参加者を一同爆笑させた。 こだわりに関する男女の違いでは、セックスワーカーの女性から、「店に来る男性の客は、女性にヘアがあるかないかを聞くことはあっても色形まであれこれ聞く人はいない」そうだ。ちなみにそこで働く全ての女性は剃毛しているそうだ。「私自身は身体のあちこちを改造しているけど、アソコの美容形成はまだよ!」とのこと。あー、なんと生々しい話。これって本当にアカデミックな学会?
                                
美容形成については、英国の40代の女性の手術事例のビデオを参考に、「新しくできた恋人にステキにみせたい」という理由で彼女が受けた美容形成に対する心理について議論が交わされた。パネラーだけでなく参加した女性たちは「何でそんな隠れたところの一部分に執拗にこだわるのか、自分の部分をそんなしげしげ毎日みるわけじゃないし・・・、朝仕事に行く前に鏡で顔や姿形はしっかり見るけど、自分のアソコを毎回チェックして出勤することはないわよね」など。皆の笑いを誘いながらもこだわりへの否定的な意見が多かった。
一方、男性参加者からも「男性としてそんなところの良し悪しを気にすることはない」「考えたこともない」など、女性ほど男性は気にしないという意見が多かった。
モナッシュ大学のリプロの研究者からは「ここにいる人たちは気にしない、という意見が大勢だけど、確実に一般の女性にはこだわりが増大している。倫理やあるべき論の問題ではないのよ、この現状をどう把握して、臨床の場でどう対応するのか、が今後の研究課題でもあるわ」と指摘していた。

とういうことで、議論の結論は出なかったが、今まで学会などでオープンに話されなかったことだけあって、主催者は、ついにパンドラの箱を開けてしまったという感じである。

ところでこの学会でもらった資料一式バックの中に下のような物が入っていた。なんだろう・・・と友人とよく見たら・・・




性交時の潤滑ジェルなのでした。
一緒に行った友人は独身でパートナーもいないので不要だから、自分の分を私にもあげる、と言ったけど、「いえいえ、私もそんなに必要ないと思います」と言って、丁重にお断りした(笑)。
しかし、学会でこんなおみやげをもらうのは初めて、すべてが大胆というかあっけらかんとしているのでただただ圧倒されるばかりだった。

最後にもう一つ。
学会の会場のトイレのドアの張り紙。


トイレの便座の上は座るもので、足ごと乗り上げて座るものではありません、という注意書きである。えー、メルボルンでもこれをやっている人がいるんだ・・・アジアの国々ではよくあるので、便器の上のカバーをわざとつけないで、はずしたまま(男性使用の状態)になっているのを見る。
それなら、日本のように和式用、洋式用のトイレを作ればいいのよね。確か、フランスではいわゆる和式風のトイレが公衆トイレに時々あったな・・・